デニス・ハーネス(Dennis Harness Ph.D.) 12ハウス
 
  ■12ハウス:不幸、あるいは、モクシャ

Dennis Harness Ph.D.
 

 ネイタルホロスコープの12ハウスは複雑で矛盾に満ちた神秘的な領域であることが多いでしょう。ヴェーダ占星術師B.V.ラマン博士によれば、12バーバ(ハウス)は「不幸や損失、消費、無駄、浪費、同情、敬愛、神聖な知識や崇拝、モクシャ(最終的な解放)と死後の状態を示す」ということです。12バーバを通して個人が損失か利益のどちらに遭遇するかということは、通常、ネイタルチャート、ナバムサ、そして、現在のダシャーやトランジットなどに反映されます。しかし、同じくらい重要なことは、12ハウスを探訪している個人の意識や姿勢が、その魂がそれらの体験からどんなことを学ぶかにとても大きな影響を与えるということです。人生のカルマでのレッスンに私たちがどのように反応し応えるのかは私たちの自由意志、あるいは、選択に関わっています。12ハウスとの遭遇は、「いくらかの痛みは避けられないかもしれませんが、苦しみは選択肢である」と言えるかもしれません。

 私の職業占星術師との最初の体験は1966年で12ハウスが関連していました。占星術師は、月と木星の両方がネイタルの12ハウスにあり、翌年に土星がそれらの天体の上をトランジットすることに注目しました。彼の1967年に関する差し迫った予測は、私は「刑務所に入るかもしれないので注意する」べきだというものでした。これは、これから家族を離れカリフォルニアへ大学の勉強を完了させにいこうとしている21歳にとっては多少狼狽させるものでした。しかし、彼の予言は確かに成就したのです。カリフォルニアでの私の最初の仕事は少年刑務所施設での若者のカウンセラーでした。私は文字通り週に60時間刑務所で思春期の少年のカウンセリングをしていたのです。私はその後いつも、このことについて、神聖な母の愛と慈悲のやり方で私の12ハウスの天体上の土星のトランジットに関するカルマのバランスをとったと考えています。

 12バーバが刑務所や監獄を示すことに加え、監禁は、隠遁所や修道院、その他の精神的な回復の場所でも起こり得ます。西洋で教えを説いたインドの偉大な聖者パラマハンサ・ヨガナンダは、「隔離は偉大さの対価」だといっています。12ハウスは孤独な体験の代わりに一人でいることの利益を教えてくれることもできます。瞑想、ヨガ、その他の精神的な鍛錬もこのハウスを通して体験されるかもしれません。島や離れた場所、洞窟も、また、12バーバに関連付けられます。

 12ハウスの伝統的なカラカ、つまり、シグニフィケーターは土星です。サニ、つまり、土星はこの領域での損失、苦悩、過酷さを反映することができます。私の意見では、ケトゥも、また、12ハーバの二次的なカラカだと考えることができると思います。ケトゥは、「モクシャカラカ」グラハで、ある程度12ハウスの事柄をも反映します。ケトゥは、損失や混乱とともに悟りと解放の天体です。偉大な聖者マザー・テレサは、彼女のネイタルホロスコープで12ハウスにケトゥがありました。

 12ハウスは、また、無意識の心を反映します。偉大なスイスの精神科医C.G.ユング博士は、かつて、「無意識の中で向き合わないものは、運命として生きることになる」と著しています。心理療法と占星術の両方の目的のひとつに無意識をより意識的にすることがあります。どちらの内視の方法論も潜在意識の洞窟の中に光を持ちこもうと企てます。12ハウスをトランジットしている天体は、恐れや心配、恐怖症などに関連するある種の心理的コンプレックスに光をもたらすことができます。隠れた家族の秘密や祖先のパターンも暴露されるかもしれません。ユングが述べたように、「もっとも偉大な罪」は無意識のままでいることです。

 12ハウスは、また、ベッドにも関連しています。睡眠や夢、愛し合うこと(ベッドでの喜び)などの活動もここに表されます。ここにあるベネフィック天体はベッドルームでの楽しみやそれに関連する喜びを反映するかもしれません。ここに位置するマレフィックは、不眠症や悪夢、性的不能や性的な楽しみの不足を表わすかもしれません。左目と足は12バーバに対応しています。このため、12ハウスやその支配星の損傷によって、視力の低下や足の問題などが起こる可能性があります。

 金銭の損失、大出費、浪費、借金などは12ハウスに関連して体験する可能性があります。しかし、このハウスは、また、必要なときに通常でない資源や隠れた宝物の箱などをもたらすかもしれません。12ハウスは2ハウス(金銭)から利益を示す11ハウス目であることや11ハウスから2ハウス目であることを覚えておくことは重要です。ことわざで言う「すぐにお手元に届きます(The Check in the mail)」を実現するかもしれません。12ハウスのベネフィック天体は困難な時期に支えるものをもたらすでしょう。人道的、あるいは、慈善的な仕事は12ハウスにベネフィックのある人には適しているかもしれません。
 まとめとして、12ハウスを意識的に探訪する方法は数多く存在します。心理セラピー、占星術、催眠術、日記を書くこと、夢解釈などは無意識の心を探訪する効果的な道具になるでしょう。瞑想や祈り、その他の精神的な実践も、また、ハイヤーセルフの超意識的な心と接触することを助けるでしょう。「トランスパーソナル心理療法」やヴェーダ占星術の究極的な目標は、神の具現化、あるいは、モクシャです。12ハウス活動の検証は、私たちが神のもとへたどり着く道や最終的な解放後体験するかもしれない意識の状態を見つけることを助けるでしょう。  


  次にネイタル12ハウスのグラハを簡単にまとめます。もちろん、天体のサイン、アスペクト、現在のダシャー/トランジットなどが大いに解釈を深め、結果に影響します。

●12ハウスの天体

  太陽:

隠者の性質、隔離の必要性、父親不在、エゴの成長に対する家族のサポート不足、支配的な母親、自尊心の低さ、王座の背後の権力、権威的人物とのトラブル、個人的アイデンティティの探索

     
  月: 子供のときの養育の不足、母親不在、子供っぽく見られることへの恐れ、瞑想への欲求、ベッドルームでの楽しみ、音に対して敏感、水が癒しになる、異国の地での成功、異なる宗教を信仰する精神的な母親、兄弟に育てられた
     
  水星:

ものかきや日記をつけるのによい、霊媒的性質、とりとめもなく話す傾向、研究や舞台裏の仕事をするのに優秀、詩人的、心配や恐怖の問題、創造的な難読症

     
  金星: ベッドの楽しみによい、失恋の恐怖、愛情を公に表現しない、初期の結婚でのトラブル、隠れた宝やもらいもの、神秘好き、長寿、平和な死、天国へ行く。
   
  火星: クジャドシャ、初期の結婚は離婚になりやすい、受動攻撃的性格、隠れた虐待の問題の可能性、hathaヨガによい、自己主張の訓練は有意義
     
  木星: 瞑想やヨガによい、グルは不在かもしれない、隠れた財政的資源、過去の両親の狭い信条システムを拡大することにくじける、死後に天国の状態を獲得
     
  土星: 精神的鍛錬の必要、奉仕の道、恐れと引きこもりの問題、足や目の問題、性的機能不全、父親が助けにならなかった、年長の相手を探す、重い借金
     
  ラフ: 睡眠障害や性的な困難、病気の診断の困難、アストラルの障害、サダナや精神的な実践へ焦点を合わせる必要
     
  ケトゥ: モクシャや精神的な解放によい。直観的な能力、精神的なコミュニティーや隠遁所が必要、遠距離の旅行を楽しむ、平和な生活環境を作り出す必要
     
  外惑星: 伝統的なヴェーダ占星術では利用されません)
     
  天王星: 占星術師によい、慣習的でない、発明精神、出身家族により独創性が窒息させられた可能性、基礎にある神経過敏さ
     
  海王星: 創造的なひらめき、幻想の時間が必要、詩人的、霊媒的、逃避的な傾向、薬物やアルコールを控える必要、超越的な心、感受性が強い、同情的、水のそばで過ごす時間が必要
     
  冥王星: 性行動や情熱の抑制、タントリックヨガが助けになる、自分が権力を持つことに対する恐怖、他人の操作、激しい子宮での体験
   
 
<参考文献>
・ Hamaker-Zondag, Karen. The Twelfth House: The Hidden Power in the Horoscope. Samuel Weiser, York Beach, ME, 1992.
・ Jung, C.G. Man and his Symbols. Doubleday, Garden City, NY, 1964.
・ Marks, Tracy. Your Secret Self: Illuminating the Mysteries of the Twelfth House. CRCS Publications, Sebastopol, CA, 1989.
・ Raman, B.V. Hindu Predictive Astrology. UBS Publishers New Delhi, India, 1992, Twentieth Edition.
・ Rudhyar, Dane. The Astrological Houses, "The Twelfth House" CRCS Publications, Sebastopol, CA, 1972.

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